肩甲骨を回すとゴリゴリ音が鳴る原因とは?構造から考えるタイプ別改善法【基山町・鳥栖エリア】

肩甲骨を回すとゴリゴリ音がする。その正体は筋肉・筋膜・滑液包の問題かもしれません。音の原因をタイプ別に解説し、危険な音とそうでない音の見分け方・セルフケアの方法まで基山町・鳥栖の専門家が徹底解説。

はじめに

「肩を回すたびにゴリゴリ音がする」

「音が鳴るたびに何かが悪化している気がして怖い」

「肩こりと一緒にゴリゴリ感が強くなってきた」

こういった悩みを持つ患者さんが、 基山町・鳥栖エリアの当院にも多く来られます。

まず安心してください。 肩甲骨を動かしたときのゴリゴリ音は、 多くの場合、筋肉・筋膜・腱の問題であり、 すぐに危険な状態というわけではありません。

ただし放置し続けると、 肩こりの慢性化・可動域の低下・四十肩・五十肩への移行 リスクが高まるのも事実です。

この記事では、ゴリゴリ音の原因を解剖学的な構造から整理し、 タイプ別のセルフケアと「すぐ受診すべき音」の見分け方を解説します。

【結論】

肩甲骨のゴリゴリ音について整理すると以下の通りです。

  • ゴリゴリ音の多くは「筋肉・腱・筋膜が硬くなり骨と擦れる音」が正体
  • 原因は筋肉タイプ・筋膜癒着タイプ・滑液包炎タイプ・姿勢タイプの4つ
  • 痛みがない場合は緊急性が低いが、放置すると悪化するため早めのケアが重要
  • 痛み・夜間痛・腕が上がらないなどを伴う場合は整形外科への受診が必要
  • 自分で故意にゴリゴリ鳴らすのは筋肉・腱を傷めるリスクがあるためNG
  • セルフケアは「肩甲骨を動かす・胸を開く・姿勢を整える」の3本柱

セルフチェックで自分のタイプを確認し、適切なケアを始めましょう。

肩甲骨のゴリゴリ音、その正体は?(解剖学的な仕組み)

肩甲骨は「肋骨の上に浮いている」構造

肩甲骨は全身の骨の中でも非常にユニークな構造をしています。

他の骨と関節でつながっているのは、肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨)の1点だけです。

それ以外の面は肋骨の上に筋肉を介して乗っているだけで、 いわば「筋肉に吊るされた浮き島」のような状態です。

この構造のおかげで肩甲骨は大きな自由度で動けますが、 反面、筋肉が硬くなると肋骨との間で摩擦が生じやすくなります。

ゴリゴリ音が生まれる3つの物理的な仕組み

音の仕組みメカニズム音の特徴
筋肉・腱の摩擦音硬くなった筋肉や腱が骨・
他の筋肉と擦れる
継続的なゴリゴリ音
筋膜の癒着音本来滑らかに動くべき筋膜が
癒着し、動くたびに剥がれる音
朝起きた直後に強い傾向
キャビテーション現象関節腔内の窒素・二酸化炭素ガスが
関節を急激に動かすと弾ける
1回ポキッと鳴って
しばらく鳴らない

医学用語では、このような音を**「軋轢音(あつれきおん)」**または **「クレピタス(crepitus)」**と呼びます。

また、肩甲骨と肋骨の間で起きる特有の引っかかり感は **「スナッピング・スカプラ症候群(snapping scapula syndrome)」**と呼ばれます。

ゴリゴリ音の正体は「骨と骨がぶつかっている音」ではなく、「硬くなった筋肉・腱・筋膜が骨と擦れている音」です。

肩甲骨まわりの主な筋肉

筋肉名位置・役割硬くなりやすい場面
僧帽筋(そうぼうきん)首〜肩〜背中にかけての
大きな筋肉
デスクワーク・スマホ操作
菱形筋(りょうけいきん)肩甲骨の内側〜脊柱をつなぐ猫背・巻き肩
肩甲挙筋(けんこうきょきん)肩甲骨上角と頸椎をつなぐ首こり・ストレス
前鋸筋(ぜんきょきん)肩甲骨と肋骨の間運動不足・呼吸が浅い方
肩甲下筋(けんこうかきん)肩甲骨と上腕骨をつなぐ腱板腕を多く使う仕事

これらの筋肉が硬くなることで、 肩甲骨の動きがスムーズでなくなり、ゴリゴリ音が生じます。

ゴリゴリ音が出る4つの原因タイプ

① 筋肉タイプ:筋肉の硬直・コリ

最も多いタイプです。

構造:なぜ起きるか

長時間同じ姿勢(デスクワーク・スマホ)を続けると、 肩甲骨まわりの筋肉への血流が低下します。 血流が低下すると老廃物が溜まり、 筋肉が硬くなり(筋硬結)他の組織と擦れて音が出ます。

長時間座る → 肩甲骨まわりの筋肉が動かない → 血流低下 → 老廃物蓄積 → 筋硬結 → 動かすとゴリゴリ

特徴

  • 肩こりや首こりと同時に起きる
  • デスクワーク後・起床直後に音が強い
  • 温めると一時的に楽になる

② 筋膜癒着タイプ:筋膜が貼り付いている

構造:なぜ起きるか 

筋膜は筋肉全体を包む薄い膜で、 本来は滑らかにスライドしながら動きます。

しかし運動不足・冷え・長期の緊張が続くと、 筋膜が隣り合う組織と癒着(貼りついた状態)します。

動かすたびに癒着部分が剥がれる際に、 ゴリゴリ・バキバキという音が生じます。

特徴

  • 朝起きた直後・長時間じっとしていた後に強く鳴る
  • ストレッチを続けると徐々に音が減ることがある
  • 肩甲骨まわりが全体的に「詰まった感じ」がある

③ 滑液包炎タイプ:クッションに炎症が起きている

構造:なぜ起きるか 

肩甲骨と肋骨の間には**滑液包(かつえきほう)**という クッションのような小さな袋があります。

この滑液包に炎症が起きたり水が溜まったりすると (滑液包炎)、肩甲骨の動きに伴って 周囲の組織と擦れてゴリゴリ音が出ます。

特徴

  • 肩甲骨の内側・背中の上部に鈍い痛みを伴うことがある
  • 重い荷物を持った後・運動後に悪化した
  • 局所的に熱感・腫れを感じることがある

④ 姿勢・骨格タイプ:肩甲骨の位置がずれている

構造:なぜ起きるか  

猫背・巻き肩・骨盤前傾などの不良姿勢が続くと、 肩甲骨が本来の位置から前方・下方にずれます。 (肩甲骨の外転・下方回旋)

この状態では肩甲骨が肋骨に対して 斜めに動くことになり、 本来スムーズに動けるはずの動作で 骨と筋肉の摩擦が生じやすくなります。

特徴

  • 猫背・巻き肩・前かがみの姿勢が習慣になっている
  • 腕を上げるときに肩が先に上がってしまう
  • 体重は標準なのに肩が盛り上がって見える

「危険な音」と「問題ない音」の見分け方

ゴリゴリ音はすべてが危険なわけではありません。 以下を参考に判断してください。

🟢 緊急性が低い音(経過観察でOK)

  • 痛みがまったく伴わない
  • 肩の可動域は問題なく動かせる
  • 音は出るが動作に支障がない
  • 温めると楽になる

🔴 すぐに整形外科を受診すべき音

  • 音とともに強い痛みがある
  • 夜間も肩が痛んで眠れない(夜間痛)
  • 腕が特定の高さ以上に上がらなくなった
  • 転倒・スポーツで肩に強い衝撃を受けた後から音が出始めた
  • 音が日に日に大きく・頻繁になっている
  • 手や指にしびれを伴う

⚠ 上記のサインがある場合、腱板断裂・石灰沈着性腱板炎・変形性肩関節症・関節唇損傷などが疑われます。必ず整形外科でMRI・エコー検査を受けてください。

セルフチェック(あなたはどのタイプ?)

以下の質問に「はい/いいえ」で答えてください。

質問はい → 疑われるタイプ
デスクワーク・スマホ操作が1日4時間以上ある① 筋肉タイプ
肩こり・首こりと同時にゴリゴリ音がある① 筋肉タイプ
特に朝起きた直後・長時間じっとした後に音が強い② 筋膜癒着タイプ
ストレッチをしばらく続けると音が減った経験がある② 筋膜癒着タイプ
音と一緒に肩甲骨の内側・背中に鈍い痛みがある③ 滑液包炎タイプ
重いものを持った後・運動後に音が悪化した③ 滑液包炎タイプ
猫背・巻き肩と言われたことがある④ 姿勢タイプ
肩を上げるとき肩が先に上がってしまう感じがある④ 姿勢タイプ

「はい」が最も多いタイプがあなたのメインタイプです。

複数タイプが同数の場合は両方のセルフケアを組み合わせましょう。

タイプ別セルフケア・改善エクササイズ

① 筋肉タイプ向け:血流改善+肩甲骨をほぐす

【肩甲骨はがしストレッチ】

項目内容
対象タイプ① 筋肉タイプ
開始姿勢椅子に座り、両腕を胸の前でクロスする。
手のひらで反対側の肩を軽く抱える
動作手順①そのまま体を少し前傾させる
②肩甲骨が左右に開く感覚を意識する
③ゆっくり3回深呼吸する
④10〜15秒キープ
⑤元の姿勢に戻す
⑥3〜5回繰り返す
作用部位菱形筋・僧帽筋(肩甲骨の内側〜背中)
なぜ効くか肩甲骨を外側に開くことで菱形筋が伸び、
血流が促進され筋硬結が緩みやすくなる
NG動作勢いよく反動をつけて行う・痛みが出るまで伸ばす
効果判定終了後に肩を回してゴリゴリ音が減っているか・
肩甲骨の動きが軽くなっているか確認する

【入浴中の温熱ケア】

38〜40℃のぬるめのお湯に15分浸かりながら、 肩甲骨を前後にゆっくり動かすだけでOKです。 温まった状態は筋肉・筋膜がほぐれやすく、 日常のストレッチより効率よくケアできます。

② 筋膜癒着タイプ向け:筋膜リリース

【胸開きストレッチ(大胸筋・小胸筋の解放)】

項目内容
対象タイプ② 筋膜癒着タイプ・④ 姿勢タイプ
開始姿勢壁の横に立つ。
右手を壁につき、肘を90度に曲げる。
手のひらを壁につけた状態で体ごとゆっくり左に向く
動作手順①胸の前〜脇の下に伸び感が出るところで止める
②そのまま30秒キープ
③ゆっくり元に戻す
④左右を入れ替える
⑤各2〜3セット
作用部位大胸筋・小胸筋・前鋸筋の筋膜
なぜ効くか胸まわりの筋膜が解放されることで肩甲骨が
後方に引かれ、本来の位置に戻りやすくなる
NG動作肩をすくめながら伸ばす・腰を反らせる
効果判定終了後に両腕を前に伸ばしたとき、左右の肩甲骨の
広がり方が均等に近づいているか確認する

③ 滑液包炎タイプ向け:炎症を悪化させない+専門家へ

滑液包炎タイプはセルフで無理にほぐそうとすることが逆効果になります。

取り組み内容
急性期(痛みが強いとき)安静にして患部を冷やす(10〜15分)。
無理な動作は避ける
慢性期(痛みが落ち着いてきたら)温熱ケアと軽いストレッチを開始する
注意自分でゴリゴリ鳴らすのは絶対に避ける
推奨整骨院・整形外科で滑液包の炎症に対する
アプローチを受ける

④ 姿勢タイプ向け:肩甲骨の位置を正しく戻す

【肩甲骨寄せエクササイズ】

項目内容
対象タイプ④ 姿勢タイプ
開始姿勢椅子に浅く座り、背筋を伸ばす。
両腕は体の横に自然に下ろす
動作手順①息を吸いながら両肩を軽く上げる
②息を吐きながら肩をゆっくり後ろ・下に引く
(肩甲骨を背骨側に寄せるイメージ)
③その状態で3秒キープ
④力を抜いて元に戻す
⑤10回×3セット
作用部位菱形筋・僧帽筋中部・下部線維
なぜ効くか前方にずれた肩甲骨を正しい位置に引き戻す筋肉を
活性化することで、肩甲骨の動きがスムーズになる
NG動作首をすくめながら肩を引く・腰を反らせる
効果判定終了後に鏡で横を向いて、
肩が耳の真下に近づいているか確認する

やってはいけないNG行動

NG行動なぜダメか
故意にゴリゴリ鳴らす硬い筋肉・腱を無理に動かすことになり、
炎症・断裂リスクが高まる
痛みを無視して動かし続ける滑液包炎・腱板損傷の悪化につながる
強くもむ・叩く炎症を悪化させる可能性がある
「音が鳴るだけだから大丈夫」と放置する肩こりの慢性化・四十肩への移行リスクがある
いきなり激しい運動をする硬いまま負荷をかけると摩擦が強まる

整骨院・鍼灸院での専門的アプローチ

セルフケアでは届かない深層の筋肉・筋膜・関節の問題には、 専門的なアプローチが有効です。

施術メニュー期待できる効果対象タイプ
トリガーポイント施術深層の筋硬結(しこり)を
直接ほぐし、摩擦の根本原因を解消
① 筋肉タイプ
筋膜リリース癒着した筋膜を解放して
スムーズな動きを回復
② 筋膜癒着タイプ
鍼灸(肩甲骨まわり)深層筋への鍼で
血流改善・筋緊張の解放
①②全タイプ
姿勢矯正・肩甲骨の位置調整猫背・巻き肩を整えて
肩甲骨の動きを正常化
④ 姿勢タイプ
超音波療法・温熱療法深部組織の炎症緩和・血流促進③ 滑液包炎タイプ

整形外科との連携が必要なケース

  • 夜間痛がある・腕が上がらない場合は腱板断裂の可能性
  • 外傷後に音が出始めた場合は関節唇損傷の可能性
  • 石灰化(カルシウム沈着)が疑われる場合はX線・MRI検査が必要

当院では必要に応じて整形外科への紹介状を作成することも可能です。

まとめ

  • 肩甲骨のゴリゴリ音の正体は「硬くなった筋肉・腱・筋膜が骨と擦れる音」
  • 肩甲骨は肩鎖関節1点だけで骨格とつながる特殊な構造で、筋肉が硬くなると音が出やすい
  • 原因タイプは①筋肉タイプ②筋膜癒着タイプ③滑液包炎タイプ④姿勢タイプの4つ
  • 痛みがなければ緊急性は低いが、放置すると肩こり慢性化・四十肩への移行リスクがある
  • 故意に鳴らすのは筋肉・腱を傷めるリスクがあるためNG
  • セルフケアは「肩甲骨をほぐす・胸を開く・肩甲骨の位置を正しく戻す」の3本柱
  • 夜間痛・腕が上がらない・外傷後などのサインがある場合は整形外科を受診する

よくある質問

Q. 肩甲骨のゴリゴリ音を鳴らすと少し楽になる気がするのですが、鳴らしていいですか? A. 一時的に楽に感じることがありますが、積極的に鳴らすのは避けてください。硬くなった筋肉を無理に動かしているのと同じ状態で、繰り返すことで筋肉・腱に微細な炎症が蓄積します。楽にするためには温熱ケアやストレッチで筋肉そのものをほぐすことが正しいアプローチです。

Q. 肩甲骨のゴリゴリ音は四十肩・五十肩と関係がありますか?

A. 直接の原因ではありませんが、ゴリゴリ音が出る状態(筋肉・筋膜の硬直・姿勢の悪化)を放置すると、肩関節の可動域が徐々に低下して四十肩・五十肩に移行するリスクが高まります。音が出始めた段階でセルフケアや専門家への相談を始めることをおすすめします。

Q. 子どもでも肩甲骨がゴリゴリ鳴りますが大丈夫ですか?

A. スマホ・タブレットの長時間使用や運動不足により、最近は子どもでも肩甲骨まわりの筋肉が硬くなるケースが増えています。痛みがなければ緊急性は低いですが、姿勢の見直しと肩甲骨を動かす運動(水泳・体操など)を日常に取り入れることをおすすめします。

Q. マッサージをしてもゴリゴリ音がなかなか消えないのはなぜですか?

A. 表面の筋肉だけをもむマッサージでは、深層の筋肉(インナーマッスル)や筋膜癒着・姿勢の問題には届かないことが多いです。根本的な改善には、トリガーポイント施術・筋膜リリース・姿勢矯正など深層へのアプローチが必要なケースが多いです。

Q. 鍼灸はゴリゴリ音に効きますか?

A. 効果的なケースが多いです。鍼灸は表面からのマッサージでは届かない深層の筋硬結(しこり)に直接アプローチできるため、血流の改善・筋緊張の解放に有効です。特にトリガーポイントへの施術(トリガーポイント鍼)は、ゴリゴリ音の原因となる筋硬結を解消する手段として臨床で多く使われています。

参考文献

  1. 中山クリニック(明石市). 肩がゴリゴリ音がする!何が原因?. 2025年2月確認.
  2. 日本整形外科学会. 肩関節疾患の診断と治療ガイドライン. 南江堂; 2020.
  3. Conduah AH, et al. Clinical management of scapulothoracic bursitis and the snapping scapula. Sports Health. 2010;2(2):147-155.
  4. 林典雄. 肩関節拘縮の評価と運動療法. 運動と医学の出版社; 2013.
  5. 竹井仁. 筋膜マニピュレーション理論編. 医学書院; 2018.

著者情報

成田 祥士(なりた しょうじ) 資格:柔道整復師 臨床歴:20年 専門分野:トリガーポイント療法・筋膜リリース・姿勢改善 りぼん鍼灸整骨院 院長(佐賀県三養基郡基山町)